飛鳥川あすは知らねど水色に今日はにほへるあぢさゐの花/一葉
飛鳥川あすは知らねど水色に今日はにほへるあぢさゐの花
【樋口一葉】
奈良の大和文華館を訪ねました。
人気のない静かな緑の道を
ゆったりと上がっていくと
白砂となまこ塀の白が目に眩しい美術館にたどりつきます。
2017年7月7日~8月20日は「宴の器」展を開催しています。
「宴の器」展も堪能しましたが、
この美術館のみどころは
展示室のなかにそびえる青い竹の一群でしょう。
そして、庭。
建物の左手から後ろへぐるりと回るのは「あじさいの小径」。
あじさいがささやきかけるように切れ目なく続きます。
訪れる人の少ない美術館なので、庭を独り占め。
小径を登りきると紫陽花の茂みは切れ、
池を臨む形になります。
この池は菅原池(通称「蛙股池」)といい、日本最古のダムと言われています。
千年の時を超えて思いを馳せてしまいます。
庭には、梅の小径や枝垂桜、芙蓉、柘榴などがあり、
四季折々の風情が愉しめる美術館です。
冒頭の歌は樋口一葉が詠んでいます。
奈良なので、飛鳥川の入っているこの歌にしました。
紫陽花は土の成分によって色が変わるので、移り気や心変わりの象徴とされることもあります。
この歌は、「明日は知らないけれど―――」が微かな決断を表しているようで、私は好きです。
2017.07.09撮影
奈良県 大和文華館 「あじさいの小径」