一日一美。

日常にひそむ美しいものを見いだして、残していきたい。一日一美。

焼き滅ぼさむ天の火もがも

君が行く道の長手を繰り畳ね 焼き滅ぼさむ天の火もがも

 

狭野弟上娘子/万葉集

 

 あなたの行く長い道のりを、手繰り寄せ重ねて畳んで、焼き滅ぼしてしまう天の火があればいいのに……!

 

 ”長手”は”ながて”と読みます。

 許されぬ恋をしたために男性が流刑となり、その流刑地に向かう愛しい人の長い道のりを焼き滅ぼしてしまう火が欲しい、という激しい歌です。

 

 写真は、「火の国」という躑躅の種類で、紫味の入らない、ほんとうに燃えるような赤です。

 「火の国」は人気のない公園の高台で、ひっそりと燃え立つように一面を彩っており、この歌を思い出したのでした。

 君が行く長手を焼き滅ぼす天の火が、道を覆ったらきっとこんな風だろうと。

 

 

f:id:perack:20181130212845j:plain

つつじ「火の国」

 2018年4月下旬、大阪万博公園、日本庭園にて撮影。