一日一美。

日常にひそむ美しいものを見いだして、残していきたい。一日一美。

水伝ふ磯の浦廻の石つつじ 茂く咲く道をまたも見むかも

水伝ふ磯の浦廻の石つつじ 茂く咲く道をまたも見むかも

 

日並皇子舎人

 

「みなつたふいそのうらみのいはつつじ もくさくみちをまたもみむかも」

日並皇子とは草壁皇子のこと。

草壁皇子皇位に就く直前に病没した際に、舎人が詠んだ(詠むことを許された)歌。

岩つつじは、ツツジと異なる種類ではなく、ツツジ科の一種かレンゲツツジヤマツツジとされているようです。

 

#挽歌

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舎人が見た岩つつじの色は、燃えるような赤だったのでしょうか、それとも葬送の白だったのでしょうか。(喪に服す色が黒になったのは最近のことのはず)

 

2017.04.30撮影

 

 

 

 

すずらんの日

今日、5月1日は「すずらんの日」。

 

フランスでは、すずらんを贈り合ったり、今日だけは誰もがすずらんを売ってもいいとか。

鈴がふるふるとなるようについている形は、ほんとうに可愛らしい。

 

ただ、すずらんは強い毒を持っているので注意が必要です。

 

 

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2017.4.30撮影

京都府立植物園

国破れて山河在り 城 春にして草木深し

「春望」 杜甫

 

國破山河在

城春草木深
感時花濺涙
恨別鳥驚心
烽火連三月
家書抵萬金
白頭掻更短
渾欲不勝簪
 
 
 
国破れて山河在り
城 春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火 三月に連なり
家書 万金に抵(あた)る
白頭 掻けば更に短く
渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す

 

 

冒頭の二句があまりに有名な漢詩

 

杜甫が賊に捕らえられて長安に在ったときの作とされています。

悠久なる自然、戦乱続く世の対比。

 

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写真は、京都御苑(ふだんは「ごしょ」って読んでますけど、正式名称は「御苑」で、「御所」は内裏のことなんでしょうね)の近衛邸跡近くの枝垂桜と下草の花(ウマノアシガタ)です。

下草がこれほどぼうぼうにされているのは珍しく、「春にして草木深し」にぴったりだと思いました。

 

2017.4.23撮影

京都御苑

さかづきに春の涙をそそきける昔に似たる旅のまとゐに

さかづきに春の涙をそそきける昔に似たる旅のまとゐに
 

  

白居易の「十年三月三十日 微之に澧上に別れ十四年三月十一日夜 微之に峡中に遇ふ」の「酔悲して涙を灑ぐ春盃の裏」を踏まえています。

 

白居易では「春のさかづき」ですが、式子内親王の歌では「さかづきに春の涙を」となっています。

「春の涙」とはなにか、と心めぐらさずにはいられない魅力があります。

 

 

 

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当時のさかづきは、こんなに鮮やかな朱塗ではないでしょうね……。

漆の器の艶は、なんとも言えない奥行きがあって見飽きません。

 

2017.4.15撮影

 

 

紅花常葉満作

華やかな紅色のリボンをめいっぱい開いていました。

 

マンサク、シナマンサクの少し後に咲くマンサクの赤花……

 

と思うでしょう。

リボンのような花弁が多くついて花の形も時期も

マンサクを思わせます。

 

が、違いました。

今回、ここに載せるにあたって調べてみたら、マンサクではありませんでした。

 

マンサク科トキワマンサク属に1種だけ存在するトキワマンサクの赤花の変種。

まあ、マンサクに全然関係ないわけじゃないのですが、

マンサクとトサミズキくらいの関係のようです。

植物の種類は、見た目や名前だけでは思いもよらないことがあって興味深いです。

 

紅花常葉満作(ベニバナトキワマンサク)、赤花常葉満作(アカバトキワマンサク)とも言うようです。

 

 

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2017.4.22撮影

京都府立植物園

いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春ゆかんとす

いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春ゆかんとす

正岡子規】 


アヤメ類の中で一番初めに咲くから「一初」

 

この後、菖蒲が来て、葵祭があって、あやめが咲いて、大田神社のかきつばたの季節が来るのです。

今年は、まだ咲きそろっていません。あと一週間ほどでしょうか。

 

まさに、「はるゆかんとす」。

病床にあった子規にとって、いちはつによって別れを告げようとしている今年の春は、ほんとうに「今年ばかりの春」となりました。

 

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2017.4.23撮影

上御霊神社