照柿
JR京都駅。
階段を上がって、ふと開けた空間で、
剥き出しの鉄骨の向こうに、
いままさに輝きを増さんとする夕陽が
目に飛び込んできました。
金属の鉄骨が黒い影になって、
却って夕陽の赤さをぎらぎらと引き立ているようです。
これはなんだったか……
照柿だ、と思いました。
実際の照柿の色とは違います。
高村薫氏の「照柿」です。
どろどろしているのに、
救いなんてないのに、
暗さから逃れられないのに、
ずきずきするようでありながら投げやりな性愛に彩られていて、
登場人物たちは諦念と投げやりと悟りを体現しているようでもあり、
一瞬烈しく輝く夕陽のようでもあり。
高校生のときに、勉強もせずに読んでいました。
2017.06.13撮影
JR京都駅
左手奥に見えるのは伊勢丹百貨店の大階段