一日一美。

日常にひそむ美しいものを見いだして、残していきたい。一日一美。

こもりくの泊瀬の山は色づきぬ

こもりくの泊瀬の山は色づきぬ しぐれの雨は降りにけらしも

 

大伴坂上郎女万葉集・巻八)

 

 ”こもりく”は”隠国”と書き、”泊瀬”は”はつせ”と読みます。

 山に囲まれて隠れているような場所のことを”隠国”と言い表し、泊瀬にかかる枕詞です。

 現在の奈良県桜井市の初瀬(はせ)あたりを指すと言われています。

 

 初瀬には真言宗豊山派総本山の長谷寺があり、全山が紅葉する姿は見事です。

 源氏物語の玉鬘も詣でる長谷寺です。

 

 かつては、木々の葉が色付くのは時雨が降って葉を染めるからだと考えられていました。

 だから、時雨が降ったから泊瀬の山は色づいたのだろう、と言っているわけですね。

 

 確かに、少し時雨れたことで、葉の色がより濃さを増したように思われる泊瀬の山でしたことよ。

f:id:perack:20181128230406j:plain

長谷寺

f:id:perack:20181128230144j:plain

長谷寺

 

 桜井のあたりは、天香山や海石榴市など古代の歌に詠まれた地が点在しています。

千年以上前に生きた人々のそれぞれの人生に思いを馳せると、時を忘れます。

 

2018年11月下旬撮影、奈良県桜井市初瀬、長谷寺本堂より。